肥溜めの中に咲く...

すべてを無に帰す臭さを発明しました

幽霊にだって嫌なことはある

皆さんは幽霊に対してどのような印象をお持ちですか?

暗い、怖ろしい、グロい、などなど恐怖の対象でしょうか?それとも懐疑的?

中には信仰の対象なんて方もいらっしゃるのでしょうけど、

とはいえやはり、ネガティブなイメージが根付いてしまっているのは事実ですよね。

 

皆さんカニはどうでしょうか?

高い?美味しい?好き?食べたい?

ポジティブなイメージを抱く方のほうが多いですよね。

 

一度頭をフラットにして考えてみてください。

カニってめちゃくちゃ恐ろしいフォルムをしていませんか?

光の届かない深海に、あんなのがワッシャワッシャと群れている。

普通に恐怖映像じゃないですか?

でもそんなことよりも、食べたい、美味しい、なんて感情が先行しちゃって、

あんなエイリアンさながらのフォルムでも、大きければ大きいほど高値を付けてみな喜びますね。

 

なぜ、幽霊とカニにここまで印象の開きが出てしまっているのでしょうか?

なぜなら、カニのことを知っているからです。

カニは食べられる、美味しい、価値がある、ということを親なり他人なりに教え込まれ、知っているから平然としていられるのです。

そして皆さんは幽霊のことを知らなすぎるのです。

だから恐怖し、忌み嫌い、存在を否定したくなるのです。

 

 

今回はそんな幽霊のことを少し知っている、僕の体験談をお話します。

 

世の中には、良い霊、悪い霊、人や場所によって様々な言い伝えや与太話がありますね。

僕は兼ねてより幽霊の存在については懐疑的でした。

TVショーでよく見る宝飾品だけがやたら目立つ霊媒師や、クラスに必ず1人はいる「ここなんかやだ、、、」と言い出すブス女など、実に滑稽だと一笑に付す側の人間でした。

自身の五感で認識できたモノのみを信じるべきと考えていたためです。

しかし、大学2年のある晩、その考えが一変するのでした。

 

その日は2月頃で、残冬の寒さが肌に突き刺さる深夜でした。

夜勤のバイトに遅れそうで、夜の国道を250ccのバイクで飛ばしていました。

田舎なものですから、深夜ともなれば車通りもなく、オレンジの外灯が何もない道路を照らすのみでした。

バイクのスロットルを回転させるほどに冷たい風が首元を通り抜けていき、とにかく早くバイト先に着かなくてはという想い一心にひた走っていました。

そんなさなか、突如首元に温い風が纏わりついたような感覚に襲われました。

風にしてはとても不快で、今思えばとても柔らかくて長い髪の毛の束を優しく巻かれたような感覚でした。

そして間髪入れずに、ヘルメットのシールドの内部左側に謎の蒼白な女性の顔が映し出されたのです。

その刹那、それがどれほどおかしいことなのか、ありえないことなのかだけは感じとりました。

ヘルメットの構造上、内側に映るものは内側に無いとおかしいのですから。

僕の脳から僕の全身に"恐怖におののけ"という命令が走る寸前のところで、その幽霊が何かを喋ろうとしていることに気づき一時的にその命令をストップさせ傾聴することにしました。

消え入るような、ラジオのノイズのような、底知れぬ恐怖を覚えさせる声でこう囁かれました。

 

「ひだり・・・ねこ・・・」

 

その直後、左側の脇道からフラフラと自転車に乗ったおじさんが飛び出してきたのです。

忠告のおかげで、間一髪のところで自転車に乗ったおじさんを避け、反対車線のガードレールにバイクを擦りつけるようにぶつかり事なきを得ました。

幽霊が、そのおじさんを猫として認識していた謎は深まるばかりでしたが、その時の僕は右足をかなりの外傷を負っており、そんなことを考える余裕はありませんでした。

怪我は負ってしまったものの、双方にとって最悪の事態は免れた。

とにかく感謝の念しかなく、思わずヘルメットの中で「ありがとうございます」と呟いたことを覚えています。

その後、そのおじさんが救急車を呼んでくれ、病院で一晩を過ごすこととなりました。

・・・

それ以降、僕は幽霊の存在について考えを改めました。

あの時僕を助けてくれたのは紛れもなくこの世の者ではなく、一言で表すなら幽霊です。

守護霊なのか、死んだ婆ちゃんなのか、はたまた通りすがりの幽霊なのか。

いずれにせよ僕はその幽霊に命を救われたという事実だけが残っているのですから。

そういった事実ベースでの確かな情報から、僕の中で幽霊の存在を確立することとなりました。

しかし存在を認めた途端に生活は一変してしまうのです。

 

僕の住むボロアパートでも遭遇するようになってしまったのです。

共用廊下の奥にある窓越しに、色が無くピンボケした女性の顔がこちらを覗いていたり。

自室の和室部屋の隅に90%ぐらいの透過率を維持して人のようなものが座っていたり。

これが映画であれば、おどろおどろしいBGMと不協和音のSEとともにバッドエンドへと展開していくのでしょうが、眼前の光景は何のオチもない大学生の現実の一コマです。

更に言えば僕は恐怖よりも感謝の念のほうが勝っていましたので、目にする度に給湯室ですれ違ったOL程度の会釈を欠かしませんでした。

そんな部屋にいるのかいないのかわからない半透明な半同棲生活が2週間ほど過ぎた頃です。

件の幽霊さんとの親密度がハート5つ分ぐらいになったのでしょうか。

金縛りイベントに遭遇しました。

今までは恥ずかしがっていたのか透過率90%ほどの見えるか見えないかの瀬戸際でしたが、その晩は40%程度まで濃さをあげてくれ、全く動かせない視界の右端にぼんやりと映しだされていました。

金縛りは未知の領域で、人ならざる謎の力で全身を制御されているような、固定されているような、なんとも息苦しく、さすがに恐怖を感じました。

そんな中、僕は保身のためではありますが、心の声で対話を試みることにしました。

 

(失礼ですがあの時助けてくれた方でしょうか?)

ー視界の右端で軽くうなづいたような気がしました。

(その節は本当にありがとうございました。もともとこちらにお住まいでしょうか?)

ーもう一度うなづいたように見えました。

(お邪魔してすみません、あと1年半ほどで出てゆきますのでどうかこのような苦しいことはやめていただけませんか?)

そう告げると、胸の苦しさがなくなり、首だけは動くようになりました。

恐怖にこらえながら顔を右に傾けると、向こう側が透けて見える女性が中腰で、無表情で、こちらを覗き込んでおりました。

恐怖、驚嘆、不安、そんな感情よりもまず先に、

(嗚呼、お綺麗な方で。)

素直にそう思いました。

女優の永作博美さんに似ているお顔立ちでしたから。

 

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しかし、そう心に思った途端、フッと眼前から姿を消し、同時に金縛りが解けたのでした。

・・・

あの夜があってから、廊下や和室などどこにも姿を見せることがなく、金縛りもありませんでした。

僕は、もう一度会いたいという気持ちに支配されていました。

彼女のことをもっと知りたいと思ったのです。

知っているからこそ、カニもエビもタコもイカも恐くない。

幽霊のことを、否、彼女のことをちゃんと知ることが出来れば、一切の恐怖を排除して単純な男女として接することができるのでは。

何か悩みがあれば聞いてあげたい・・・。

何か別の感情に満たされ、鼻息荒く床に着くのでした。

 

ある晩、身体の違和感に気づき目を覚ましました。

待ちに待った金縛りです。

しかしやはり重苦しい感じは変わらず、むしろ前よりも苦しく感じました。

(すみません、苦しいです、弱くしてください)

そう懇願すると、少し、ほんの少し軽くなりました。

少しだけ自由になった顔を右に傾けると、先日はこちらを覗き込むほど近くにいた幽霊さんが、半歩だけ後ろに下がって様子を窺うようにこちらを見ていました。

その時僕はとても恐ろしいことに気づいてしまったのです。

 

ーああ、なんか警戒されている・・・。

 

合コンの時、無理やり隣に座って連絡先を聞いたときのあの空気感。

カラオケの後、肩に手を回したらやんわりと払われ、少しの間をあけて座りなおされたあの空気感。

一緒や・・・。

 

(すみません、もう少し弱めてくれませんか、お話したいです)

 

そう懇願すると、また少しだけ身体にかかる圧が弱まった気がしました。

恐らく彼女の手の内で、僕にかかる圧の強弱をコントロールできる仕組みなのでしょう。

更に自由になった視界を彼女のほうへ向けました。

ぼんやりとはしているものの、僕はしっかりと胸の二つの膨らみを確認しました。

そこには小さく頼りない膨らみが二つ。

元来巨乳派の僕でしたが、まさしく妖艶な彼女に対しては、胸の大小など些細な事に感じました。

 

(あの、何か悩みがあれば聞かせてください)

 

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そう心の中で告げると、少し身体への圧が強くなった気がしました。

男というのは懇意にしている女性から警戒されると、一か八かの賭けに出がちです。

特に経験の浅い男はその傾向にあると思います。

当時の僕もその類だったのでしょうか。

一か八か過ぎる賭けに出てしまったのです。

 

(もうぶっちゃけますが、幽霊ってフェラチオできますか?お願いしたいです。)

 

その瞬間、無表情だった彼女の顔が「うわっ・・・」という害虫でも見るかのような最大級の嫌悪を示す表情へ移り変わり、僕のみぞおち辺りに塊のような圧、いわゆるグーパンチですかね、それを3回ほどドンドンドンと喰らわせたのちに去ってゆきました。

 

一瞬で嫌われてしまったのです。

 

それから10数年の時が経ったわけですが、あれ以来一切、心霊の類とは遭遇しておりません。

もし彼ら彼女ら幽霊の世界があるとしたら、恐らくあの時の僕の所業のそれが、要注意人物として霊界メールか何かで回覧・流布されてしまったのでしょう・・・。

 

僕は幽霊に対して、ネガティブなイメージは一切ありません。

コミュニケーションの機会と物量が足らないだけなのです。

彼らも確かに悪いところはあります。

暗いところや物陰、無意識化の視界、そういったところに予告なく音も無しに現れたら、誰だって恐怖します。

僕も心臓が縮まる思いを何度もしました。

でも、しっかりとこちらからコミュニケーションを図っていけば、人間らしい様子を垣間見せることもあるのです。

 

いったい、幽霊とは何なのか。

本当に実在するのか。

残留思念、プラズマ、思い過ごし、脳のバグ、夢、色々な解釈があることでしょう。

僕にも一体そのどれなのかは未だにわかっていません。

でも僕は信じたいのです。

エロくて可愛い女性の幽霊なら、いくらでも傍に居てほしいと。

今一度、あの時の幽霊の方にお伝えします。

 

ありがとうございました、そして大変申し訳ございませんでした。